きのうまで東京に出張していた。
朝、目覚ましをかけた覚えはなかったのだが、たぶん前の宿泊客の設定のままになっていたのだろう、7時45分にとつぜん、枕元のラジオがたからかに鳴り響いた。
熟睡していても、不思議なことに、目覚まし時計(ラジオ)が鳴る直前って、なんとなく直感でわかる。たぶん機械的ななにかの都合で、鳴る直前に小さな音が出てるんだろう。
ラジオが鳴り響いたときにはすでに手をのばしていて、その瞬間に適当にそのへんを叩いて音を止めた。
だが、その一瞬のあいだに、女性アナウンサーが、朝に似つかわしいさわやかな声で、
「沖縄では、キジムナーという」
と言った。
24時間、365日、たくさんのラジオ局から、いろんな言葉が流れつづけている。1時間に、1日に、1年に、ぜんぶで何億字、何兆字の言葉が流れることだろう。たまたま泊まっただけの、東京の小さなホテルの部屋で、とつぜんその膨大な言葉の流れから、ほんの12文字の言葉が切り取られ、私の枕元にぽとんと落ちた。そしてすぐに静かになった。
しかも沖縄かよ。