スナック「プロファイラー」の夜

たまにスナックに行く。

一見さんでふらっと入るとだいたい、「お客さんお仕事何ですか?」と聞かれる。

そういうときはやっぱりスナックっぽい返しをしないといけない。うざいおっさんキャラで、「何に見えるぅ?」とか聞き返す。

話は変わるが、こないだ若作りしてDr.マーチンの靴を買った。形はマーチンっぽいが夏なのでキャンバスの素材のやつを買った。色は黒。

黒いキャンバス地の靴で大学で授業をしていると、チョークの粉がめっちゃ付いて取れない。しかたないので、白い染みがついたまま履いている。

スナックで。

ママ「お客さん、お仕事何してる方なの?」

おれ「何してるように見える~?」

ママ「えーと、そうですね………その靴の白い染みは……チョークの粉だな? ということは学校の教員だな。そしてそのラフな服装と無精髭……中学や高校ではないな……わかったぞ! 貴様、大学の教員だな!!」

みたいなことになるかもしれんなと思って履いている。


ゴッホは絵がうまい

ふっと思い出したんだけど、もう20年以上も前だけど、大阪のどこかの美術館に「大ゴッホ展」みたいなのが来た。どこの美術館でもそうだと思うけど、こういう「大シャガール展」とか「大ピカソ展」とかって、めちゃめちゃ集客する。

そのときもその美術館は超満員だった。私はもうゴッホ見に来たんだか人見にきたんだかわからんようになって、もうざあっと眺めてはよ帰ろうと思ってたら、会場にぎゅうぎゅうになってる大阪のおばちゃんの集団が、大声で喋りながらゴッホの絵を見てた。おばちゃんたちは口々に、

「ゴッホ、絵うまいな。さすがやな!」

「ほんまに上手やなーゴッホ」

と言いながら見てた。

なんか知らんけどめっちゃ思い出す。ゴッホは絵がうまい。なんか知らんけどものすごい大事なことに思える。そうだよな、そういうもんだよな。アートとか芸術とかっていっても。みんなそんなもんだよな。


スポーツって何ですか

なんかスポーツができる人間だったら、もうちょっといまとは違う人生だったかな、と思う。

スポーツ何もかもできないし、できないだけじゃなくて、見てても何やってるかわかんない。バスケもサッカーも、ひととボールがランダムにあっちいったりこっちいったりしてるようにしか見えない。ボクシングとかのすごい試合をyoutubeで見ても何やってるか理解できないし、マラソンの中継とかを長時間テレビで見続けられるのが信じられない。走ってるところみてどこが面白いのか理解できない。

これほど徹底的にスポーツができない、できないだけじゃなくて見ててもルールすら理解できない人間じゃなくて、もうちょっと人並みに体を動かすことができたら、もうちょっと違う人生だっただろうか。

とにかく普通に走ったり、ボール投げたりができない。特に球技がまったくできない。飛んできたボールを受け止めることもできない。20m走ると息が切れるのは、子どものときに喘息だったからだろうか(病院とかもいかないぐらい軽いものだったけど)。

体を動かして、その体を動かすということ自体が楽しい、と思ったことが一度もない。子どものころに、まわりに合わせてそういうゲームを一緒にやったりしたことは何回かあるけど、心から楽しんだことは一度もない。勝ったとか負けたとか、競う、ということの面白さも、あんまりわからない。

とくにわからないのが「ひいきのチームがいる」という状態で、たとえば全員大阪生まれの大阪人で構成されたチームが、全員京都生まれの京都人で構成されたチームにボロ勝ちする何かのゲームがあれば、そういうチームに感情移入することもわからないでもないが、チームの中身である個人が入れ替わっているのに、それでもそのチームを応援し続けるというロジックがわからない。

もっとわからないのが戦術とか作戦とかいうやつで、それはたまたま強い個人が多かったチームが勝つならまだ理解できるが、なにかの作戦とか戦術とかでゲームの行方が変わるということがまったくわからない。というか、そもそも、さきも書いたようにサッカーもバスケも、人がランダムに動いているだけのブラウン運動にしか見えない。だから、監督という存在の意義がわからない。たとえばプロ野球の話を聞いていて、あそこであの選手を出したのがまずかったとかよかったとかそういうことがよく言われるけれども、それがどういうことなのか理解できない。たまたまそういう結果になっただけじゃないですか。誰が何をやっても上手な個人が多いほうのチームが勝つんじゃないですか。

     *  *  *

ただ、いま体をまったく動かしていないかというとそうでもなくて、週に1度か2度は3時間ぐらい大阪の街をゆっくりと歩く。あと、若くてヒマなときは、沖縄の離島でひたすらたったひとりでシュノーケルをしていた。歩くのが好きなんじゃなくて大阪の知らない街並みを見るのが好きで、泳ぐのが好きなんじゃなくて(そもそも泳げない)、海に潜るときの、あの音や温度の変化や水圧の感じが好きで、もちろん何よりも沖縄の美しい青い海そのものが好きなので、ひとりでひたすら素潜りしていた。

実はボールを投げたり打ったり受け取ったりすることができないだけではなくて、ゆっくりふらふら飛んでいる蚊を叩くこともめったに成功しないので、なにか体と脳をつなぐ配線が、どこか何本か切れているんだろうと思う。

その配線がうまくいっていて、体の動きも統合できていたら、なにかもっと肯定的な、楽しみの多い人生だったかもしれないと思う。


毎日新聞コラム「ブックマーク」連載まとめと、ボツ原稿

というわけで、3ヶ月続いた『毎日新聞』でのコラムも無事に終了しました。たくさんの方に読んでいただいて、(一部で)ご好評をいただきました。みなさまありがとうございました!

読める記事数に制限があるみたいですが(笑)、いちおうまとめてURLを置いておきますので、またおヒマなときにでもお読みください。

この連載、じつは全13回分を、2日ぐらいで書き上げました。とても楽しかったのですが、そのなかで、「これだけたくさん書くんだから、ひとつぐらいわがまま言わせてもらおう」と思って書いたものがあります。そしてそれは、みごとにボツになりました。

記念に、このページのいちばん下に置いておきますので、よければお読みください。たんにdisってるだけの文章で、自分でも「そりゃーボツだわな……」と思います。

新聞紙上で連載するのは初めてでしたが、反響も大きく、楽しいお仕事でした。また機会があればどこかでぜひ続きを書きたいと思います。

2016年04月04日
まぶしかった沖縄
http://mainichi.jp/articles/20160404/dde/018/070/061000c

2016年04月11日
人生を肴に飲む酒は
http://mainichi.jp/articles/20160411/dde/018/070/011000c

2016年04月18日
沖縄の「いい暮らし」
http://mainichi.jp/articles/20160418/dde/018/070/058000c

2016年04月25日
偶然の出会い
http://mainichi.jp/articles/20160425/dde/018/070/007000c

2016年05月02日
雰囲気デフレ効果
http://mainichi.jp/articles/20160502/dde/018/070/026000c

2016年05月09日
そうやなくて…
http://mainichi.jp/articles/20160509/dde/018/070/021000c

2016年05月16日
小さな達成感
http://mainichi.jp/articles/20160516/dde/018/070/049000c

2016年05月23日
誰もが組織嫌いだが
http://mainichi.jp/articles/20160523/dde/018/070/025000c

2016年05月30日
思いきって声を
http://mainichi.jp/articles/20160530/dde/018/070/019000c

2016年06月06日
「個人」はかっこいい
http://mainichi.jp/articles/20160606/dde/018/070/017000c

2016年06月13日
人のおらんとこで…
http://mainichi.jp/articles/20160613/dde/018/070/031000c

2016年06月20日
「できない」は見えにくい
http://mainichi.jp/articles/20160620/dde/018/070/018000c

2016年6月27日
愛されたくめんどうな俺
http://mainichi.jp/articles/20160627/dde/018/070/014000c


ボツ原稿(タイトル未定)

 すみません、これはお叱りを受けるかもしれませんが、思い切って言います。バーや居酒屋を含む全ての飲食店を、禁煙にしていただけないでしょうか。

 おととい、昼ごはんのときに、たまたま通りがかった中華屋にふらっと入って席について、酢豚とかに玉の定食を食べてたんですが、となりのおっさんが食べ終わったあとタバコを吸いだした。

 ほんとうにもう、何といっていいかわからないですが、猛烈に臭いです。副流煙がとか、発がん性物質が、とかじゃなくて、純粋に臭い。ほんとうに臭い。世の中に臭いものはたくさんあるが(私もそうとう加齢臭な年齢になってきた)、タバコの臭さはまた格別というか、独特です。精神的にかなり堪えるものがある。

 煙を向こう側に吐くとか、そういう小手先の配慮ではどうしようもないですよ。分煙とかも意味ないです。とにかくどこかでだれかが吸いだしたらすぐにわかります。ほんのちょっとでも猛烈に臭い。

 ときどき台湾や香港に行きますが、もうどこでも店内はすべて禁煙ですよ。いろんな国ですでにそうなってきています。なんで日本でできないんですか。政府は何をやってるんですか。別に一生吸うなとは言いませんよ。ただちょっと、吸いたくなったらお店の外で吸ってくれたらそれでいいんです。

 特に私は酒が好きなので非常に困ります。お酒を飲む店はだいたい喫煙可なんです。あとなぜか中華屋さんも喫煙可のところ多いですね。私は中華も特に大好きなので、つくづく困ります。最近はもう、バーでも居酒屋でも、喫煙の店には入らなくなりました。それで客を逃してる店も多いと思う。

 この場をお借りして、心の叫びを書かせていただきました。お気を悪くされた方がいたらごめんなさい。でもいつもほんとうに臭い思いをしてるんです。あと髪の毛や服にもいつまでも残るしね! ウールの上着に匂いついたら取れないですよ!


がんばれ山口さん

さっき職場から帰る電車のホームで、ひとりのスーツ姿の男性がケータイで、仕事の話をしてたんだけど、そのうちかなり強い口調で、こう言った。

「そこを受け入れるか突っぱねるかは山口さん次第です。」

ふと顔をみると、いまどきのツーブロックのカリアゲの、若いイケメンだった。なんとなく切なく、悲しくなった。

あのな。ちょっと、山口さんがなんでそこで立ち止まってしもたか、なんで山口さんがそこで悩んでしもたんか、考えてやれよ。

山口さんはな、簡単に選ばれへんねん。受け入れるか突っぱねるか。それが選べないのが山口さんだし、山口さんのポジションは、そんなにほいほいどっちか決められへんようなところにあるやんか。

理屈で言うたらそらキミのほうが正しいよ。だって仕事は仕事だもん。ほんまにそうやで。そこどっちか決めへんかったらな、しょうがないやんか。みんなそうやって、難しい選択肢のなかからどれかを選んでるんやから。

いや、それはわかるねん。ようわかってるねん。でもな、組織ってそういうもんとちゃうやん。

いや、確かに俺はな、会社に雇われたことないで。でもな、大学のせんせーいうてもサラリーマンと一緒やからな。わかるねん。組織はそんなもんとちゃう。

そこでな、理詰めで追い込んだら、山口さんどう思う? 山口さんのモチベーション、どないなる? それがひいては、組織全体の士気みたいなもんにつながってくるんやで。

ときには山口さんの言い分も聞いたげるのが、大人ってもんやで。

がんばれ山口さん。受け入れるか突っぱねるか。ほんまに難しいやろけど、でも俺は山口さんを信じてるで。がんばれよ、山口さん。

誰か知らんけど。


大事だけど、そのすべてではない

社会学者や評論家や作家で、ふだんリベラルなことを言うのに、性的な領域に関する話題になるととたんに「ロマンティシズム全開」になるおっさんがいる。

ふだんは個人主義的で合理主義的なことを発言するのに、「性」、あるいは「女」についてのことになると、とたんに「ただのおっさん」になる。

たとえば、労働市場における女性の不利な扱われ方についての議論をしているときに、こういうおっさんはよく、「女性を『男性なみ』にすることは、女性が本来持っている役割を否定することにつながる。悪しき平等主義だ!」とかいうことを言う。

古典的といえば古典的だが、いまだにこういうことを言うおっさんはとても多い。

最近笑ったのが、これ。

島地勝彦の「遊戯三昧」 「絆す」の読み方、わかりますか? 2人の伝説的編集者が明かす人間関係の奥義──第13回ゲスト:松岡正剛さん(後編)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48534?page=3 (3ページめ)

島地 そう、プールに行ったら必ず、250メートルは後ろ歩きします。

松岡 なんだ、案外、健康に気を使ってるんじゃないですか。

島地 健康というより、鍛錬です。シングルモルト、葉巻、肉、女。人生を充足させる4つの要素を楽しむための鍛錬とお考えください。

人生を充足させる4つの要素が「シングルモルト、葉巻、肉、女」であることにも笑ったが、そのためにしていることが「プールで後ろ歩き」である。おっさんというより完全におじいちゃんだ。段差に気をつけてね。

性的なもの、あるいは女性そのものに対するこうした「男のロマン」(笑)には、逆に、性的なものなしでは自分自身さえ保てないような、おっさんの過剰な思い入れが感じられる。

いつも思い出すことがある。

高校のときに、生物の先生が授業中、生殖の話をしてて、男子校だったこともあり教室がけっこうザワザワしたのだが、そのときにその先生が、いつも温厚な先生だったがそのときも穏やかに、語りかけるように、おまえらな、若いからしょうがないけどな。たしかに、性的なものは、大事なことだよ。だけど、人生にとって、性的なことなんて、ごく一部でしかないんだよ。それは大事なことで、おろそかにしちゃダメなことだけど、でもそれは、人生のぜんぶじゃないんだよ。

って言ったのが、ふだん授業なんてぜんぜん聞いたこともなくて、そもそも高校のときから授業なんかサボりまくってたけど、それでもなんか妙にそのとき感動して、だからいつまでも覚えてる。

とても大事な人生の一部だけど、でもそのすべてではない。

いまだによくわからないけど、なんか妙に、その一言を、ずっと覚えている。


コーヒーの性別

私もまだまだ、ジェンダー・バイアスに縛られている。いろいろ勉強してるつもりにはなっていても、ぜんぜんダメである。いまこれを書いているのは梅田のシェアオフィス(あるいはコワーキングスペースともいう)だが、カフェよりもこっちのほうが他のみんなも仕事してるので自分も仕事に集中できるのでよく使うんだけど、さっき受付で誰もいなかったので、すぐ目の前で机をクロスで拭いていた若い女性に「あの、すいません」って言ったら苦笑されて、他のひとを呼びにいった。

あっっっっっしまった、スタッフじゃなかったのか……

もちろん、「机を拭いていたから」そう思ったんだけど、いうまでもなく「若い女性だったから」という部分がないかっていうと嘘になる。すいません、ジェンダーバイアスめっちゃありました……。

その女性には「すみませんすみませんすみません……」と平謝りしたが、しばらく私の顔は真っ赤になっていたと思う。めっちゃ汗かいた。

私の連れ合いもよく、大学の事務室で「院生あつかい」されるという。「いちおう准教授なんやけどな! 特任だからか! 特任だからこういう扱いなのか!」と、なんか理不尽な感じでいつも怒っている。

一方で、自分がそういうふうに見られることもある。これ、前から気になってて、こないだ連れ合いと「そうだよね? 多いよね?」と笑ったのだが、私はこんな汚いむさくるしいおっさんだが紅茶が好きだ。笑うがいい。コーヒーより紅茶が好きです。そして連れ合いは無類のコーヒー好きである。朝も必ずコーヒーだし、夜中にいきなりコーヒーを飲むこともある。私は匂いだけで眠れなくなってしまう。

ふたりで外で食事をしたとき、食後の飲み物を、私はかならず紅茶、連れ合いはかならずコーヒーを頼むのだが、120%ぐらいの確率でかならず、ウェイターやウェイトレスさんが、コーヒーを私のほうに起き、紅茶を連れ合いのほうに置く。「いや、逆です」というと「失礼しました」と言って置き直す。

これ、前からすごい気になってる。なんでコーヒーが男で、紅茶が女なんだろう…………


ナポレオンの帽子

こないだ昼の15時半から飲んだ。高齢者の方がたと一緒だったので、そんな時間になった。そしてそういう時間から空いている店が、梅田にはたくさんある。

そこで十三の話になった。

おれ最近、十三のトミーズっていうお店で演奏させてもらってるんですよ。

せんせい、音楽やってまんの

そやねん。ジャズの演奏してんねん。

またかっこよろしな。

いやかっこわるいで。でな、そこで、そのビルのオーナーに紹介してもろてん。

うん。

そのビル、ナポレオンプラザっていうねんけど、いまどき「アルサロ」とか、ポールダンスのバーとかあんねん。女の子がビキニで踊ってるねん。めっちゃおもろいで。

よろしなー

めっちゃおもろいで。で、演奏終わったあとのお店で飲んでるときに、ビルのオーナー紹介してもろてん。で、オーナーさんから、「ナポレオンプラザ」っていうビルの名前の由来聞いてん。

うん。

あのな、先代のオーナーが、えらい何千万円で、ナポレオンの帽子を落札したらしわ。

ナポレオンの帽子、そんなにしますの。

ほらするやろ。実際にかぶってた帽子やで。

あー、ナポレオンが実際にかぶってた帽子そのものでっか

そやねん。それで、ナポレオンプラザいう名前にしたらしいで。

へええええええ

でな、まだ続きがあるねん。その先代のオーナー、めっちゃ太っ腹なひとでな。当時、大阪の景気もよかったんやろな。その帽子を落札したあと、フランス政府に寄贈したらしわ。

ひえええええええ

でな、その寄贈式をやるいうて、十三の淀川の河川敷で、ひと集めて、たぶんフランス大使館とかも呼んだんやろな、そこで寄贈式して、そのときに花火やったんやで。

うん。

で、それが、いまもやってる淀川花火大会のモトらしで

(その場の全員)「そんなうまいことできた話があるかいな…………」

いやいやあるねんて。ほんまやねんて。オーナーさん言うてはったんやて。

(その場の全員)「さすがにうそやろ…………」

いやいやいやいや

     *  *  *

ナポレオンプラザのFacebookはこちら。
https://www.facebook.com/jusonapoleonplaza

ビルの主力店舗(笑)「アルサロふうりゅう」のFacebookはこちら。
https://www.facebook.com/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%83%AD-%E3%81%B5%E3%81%86%E3%82%8A%E3%82%85%E3%81%86-916862628351000/

いつも平野達也トリオで演奏させてもらってるトミーズはこちら。
https://www.facebook.com/Pianobartommys/

2015年の1月は4回出演しまっせ。どうぞごひいきに。詳しくはお店のページで。


生駒が見える日

きょう、銀行で2時間もローン借り換えについて相談して、疲労困憊した。ああいう事務的な話は普段慣れてないので本当に疲れる。事務仕事は、大学でも失敗ばかりだし。ほんとうに苦手。

対応してくれたのが若い銀行員の男子で、いまどきのイケメンだったんだけど、新卒で、はじめての客だったので、先輩も横について、たどたどしく説明してくれた。普段ならいろいろツッコミを入れるところだけど、実は俺のゼミの卒業生が毎年のようにたくさん銀行や信用金庫に就職していて、あああいつらもこんなことやってんだな、と、なんかしみじみした。

こないだからしみじみしてばっかりですが(前回のエントリ参照)。

頭がくらくらしたので、連れ合いの「おさい」とふたりで、帰りに遠出して、淀川まで散歩した。きょうはたまたま、ものすごく空気が澄みわたっていて、遠くのほうまではっきりと見えた。広い淀川の対岸の堤防を歩く人の姿まで見えた。

きょうは空気が澄んでるな。

ほんまやな。

生駒山の上のテレビ塔のアンテナまで見えるわ。

あ、ほんまや。

ここで急に、30年近く前のことを思い出した。大学に入ったばかりのとき、ジャズ研のピアノの平野くんと、ボーカルの向井さんと3人で、よく遊んでいたのだが、当時の下宿も淀川の近くで、よく缶ビールを持って散歩してた。

そのときも空気が澄んでいたのだろう、だれかが、きょうは生駒山の上のテレビ塔のアンテナまで見えるな、と言った。あ、ほんまやな。きょうはよく見えるな。

2年ぐらい前に、同じ学科の先輩教員と、沖縄で飲んだことがある。毎日のように顔を合わせて会議やら何やらしているひとと、1000キロぐらい離れた那覇の栄町でべろんべろんになった。ふだんしょっちゅう会ってるひとと、遠く離れたところで飲む。とても奇妙な感じで、とても面白かった。ここには時間の差はなくて、空間の距離だけがある。

きょう、淀川の同じ場所で、同じ言葉を聞いた。空間的には同じ場所で、時間だけが30年ちかくも経っている。

銀行でローンの借り換えの話をしたときに、返済の計画のシミュレーションをしてもらった。あなたの人生はあとこれだけですよ、と言われた気がした(みんなそう感じると思う)。

12月の夕方に散歩していると、日が短くてすぐに暗くなるし、みんな忙しく何かの準備をしていて、街がせわしない。中高生が友だち何人かでふざけながら、自転車で通り過ぎていく。スーパーでは安売りをしていて、客でごった返している。こうやって1年が終わっていく。

こないだからしみじみしっぱなしである。

そういえば、そのピアノの平野くんと、いまピアノトリオでいろんなところで演奏している。大学のときと同じように、大学のときと同じメンバーで、大阪のいろんなところのバーやライブハウスで演奏してると、時間も空間もずっと同じところにいるみたいな、めまいがするような、妙な気分になる。

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クールテックと豚玉

ちょっと大事な会合があって、さっき仕事が終わってから鶴橋に行ってきた。

小腹が空いていたので、まえから気になっていたお好み焼き屋にひとりでふらっと入って、豚玉を注文。

作業服のおっちゃんが酔っぱらって、店のおっちゃんとおばちゃんと、ずっとどうでもいい話をしてる。それを聞きながら豚玉を食う。

あのな。ユニクロのクールテックってあるやんか。

あるな。

ヒートテックちゃうで。クールテックやで。

クールテックやな。

そうや。

あのな、それでな。クールテックってな。

うん。

冬に着ると、めっちゃ寒いねんで。

あまりにもどうでもいい話だったので、つられて俺も大声で笑ろてしもた。そしてつい、おばちゃん、こっちにもビールくれ。アサヒちゃうで。キリンやで。

というわけで、会合の前にいっぱい引っかけることになった。

豚玉、めっちゃくちゃうまかった。
豚玉、めっちゃくちゃうまかった。
お好み焼きとたこ焼きとうどんと串カツとおでんあります。
お好み焼きとたこ焼きとうどんと串カツとおでんあります。

 

大阪で暮らしてよかったと思う瞬間である。

クールテックは冬に着ると寒い。

 

 

大阪に出てきてからもう30年。ワイも一生ここで暮らすんや。