シュレディンガーの猫の話が、むかしから嫌いだ。猫がかわいそうすぎる。
箱のなかに猫がいて、生きてる状態と死んでる状態が重なり合っている。箱を開けると、文系にはよくわからない理由で、生きてるか死んでるかはっきりする。
調べてみると、単に生きてるか死んでるかはっきりしたときの、死んでる状態って、たんに病気とかで死んでるんじゃなくて、青酸カリで殺すらしい。
シュレディンガーはなんてひどい話を考えるんだろう。シュレディンガーが憎い。
かわりに箱に閉じ込めてやりたい。シュレディンガーの猫ではなく、猫のシュレディンガー。箱のなかにシュレディンガーが入っている。生きてるか死んでるかわからない。猫が器用に箱をあけると(たまにキッチンのドアとかを開ける子いるよね)、シュレディンガーは、いつも生きている。猫は飼い主にそんなひどいことをしないからだ。
シュレディンガーと猫のふたりは、いつまでも仲良く暮らす。
ある日、シュレディンガーと猫が空を見上げると、銀色に輝くロケットが、空から降りてくる。ロケットは無事にシュレディンガーの庭に着陸する。中から1匹のライカ犬が出てくる。
ぼくをロケットに閉じ込めて、餓死するまで飛ばすなんてひどいよ。
ごめんごめん。びっくりした? ほんとうは、ちゃんと自動的に地球に帰ってくるように、ロケットをあらかじめプログラムしといたんだよ。
そうか、よかった。ほっとしたよ。
にゃー。
こうして、シュレディンガーと猫とライカ犬は、友だちになった。そしていつまでも仲良く暮らした。