国際学術シンポジウム「歴史・人生・物語──東アジアのオーラルヒストリー研究」開催のお知らせ

このたび、東アジア生活史研究会は、以下の要領で国際シンポジウムを開催します。みなさまぜひふるってご参加ください。(要予約・参加無料)

──シンポジウム概要──

歴史・人生・物語
──東アジアのオーラルヒストリー研究

2022年2月20日(日) 14:00 〜 19:00
オンライン配信のみ/要予約・参加無料

参加申し込みフォームはこちらです。
※定員に達しましたので締め切りました。ありがとうございました
(先着300名)

〈第一部〉
大阪市立大学都市文化研究センター研究員 全ウンフィ
日本大学国際関係学部助教 陳怡禎
大阪国際大学人間科学部講師 上原健太郎

〈第二部〉
国立政治大学台湾史研究所准教授 李衣雲
韓国学中央研究院教授 金元
慶應義塾大学総合政策学部教授 清水唯一朗
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授 岸政彦

総合司会:東京大学大学院情報学環教授 北田暁大
主催:東アジア生活史研究会
共催:立命館大学生存学研究所
使用言語:日本語・中国語・韓国語(通訳付き)/参加無料
お問い合わせ:東アジア生活史研究会事務局(yoyaku@sociologbook.net)

──報告詳細──

〈第一部〉
2018年〜2020年までに日本の沖縄、韓国、台湾の戦争経験者に対して実施した、東アジア生活史研究会による生活史聞き取り調査の概要を、研究会の所属メンバーが報告する。

第1報告 日本大学国際関係学部助教 陳怡禎(台湾調査)
第2報告 大阪市立大学都市文化研究センター研究員 全ウンフィ(韓国調査)
第3報告 大阪国際大学人間科学部講師 上原健太郎(沖縄調査)

〈第二部〉
台湾・韓国・日本でオーラルヒストリーを研究する研究者たちが、それぞれの調査研究から、「歴史と人生の語り」について報告する。

第1報告 李衣雲

1971年生まれ。台湾史学者。台湾・国立政治大学准教授。研究テーマは大衆文化・漫画史、消費文化、集合記憶。主な著作に『邊緣的自由人──一個歷史學者的抉擇』『台湾における「日本」イメージの変化、1945-2003: 「哈日(ハーリ)現象」の展開について』『變形、象徵與符號化的系譜:漫畫的文化研究』など。論文に「戦時体制下台湾の『デパート』―全体主義と個人の軋轢」「一九四〇年代~一九六〇年代の台湾漫画──政治、イデオロギー、文化の場の競合」「日本統治期視覚式消費と展示概念の出現」など。

報告内容

本報告は、2019年に刊行された『邊緣的自由人──一個歷史學者的抉擇』の執筆過程に対する振り返りである。報告者は、歴史学者である父親の李永熾氏によるオーラルヒストリーを中心に、多くの第三者視点、新聞記事資料や記録なども取り扱い、李永熾氏の学術思想や生活史を構築するとともに、日本植民地時代から戦後の台湾社会を記録した。ここでは以下の二点について討論する:第一に、オーラルヒストリー研究における一人称的記述や三人称的記述の転換方法、また、当人の記憶が曖昧な語りから庶民の生活史を構築するための、裏付け的な資料収集の困難である。第二に、報告者は父親によるオーラルヒストリーへの記述を通じて、自分自身の故郷に対して見方や感情を再構築した経験がある。このような経験を通じて「空間」は「場所」として意味づけされる。この過程の重要性について議論したい。

第2報告 金元

1970年生まれ。 近現代韓国学研究者。 韓国学中央研究院教授。研究テーマは韓国におけるマイノリティ、サバルタンなどに関する口述資料に基づいた研究。 主な研究は『女工1970—彼女たちの反歴史』、『朴正煕時代の幽霊たち』、『忘れられたものたちへの記憶—1980年代大学の下位文化と大衆政治』、『1987年6月抗争』(以上韓国語)など。2009年以降「現代韓国口述資料館」研究プロジェクト(https://mkoha.aks.ac.kr)で研究責任者を務めている。

報告内容

2010年代初めに調査した1980年5·18民衆抗争の時期に起きた、一家殺人事件に関する口述資料について報告する。 今回の報告では、当時ソウル、光州、莞島で行われた現地調査および口述調査に基づき、表では個人間の恨みのようにみえる殺人事件が、実際は1945年の植民地支配からの解放後の内戦、朝鮮戦争、湖南地方をめぐる地域間経済格差、そして朝鮮戦争の記憶が1980年5月に再び登場する過程を紹介する。

第3報告 清水唯一朗

慶應義塾大学総合政策学部教授。専門は日本政治外交史。博士(法学)。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業ののち、政策研究大学院大学、東京大学でオーラルヒストリーによる政策研究に参画する。米・ハーバード大学客員研究員、台湾・国立政治大学客員副教授などを経て、現職。オーラルヒストリーを用いた研究、教育を続ける。著書に『原敬』(中公新書、2021年)、『The Origins of Modern Japanese Bureaucracy』(英Bloomsbury、2019年)など。

報告内容
これまで政治家、官僚といった「公人」を中心としたオーラルヒストリーに取り組んできた立場からすると、歴史・人生・物語という本シンポジウムのテーマはとても魅力的に映る。彼ら彼女らのばあい、公的な人生と私的な人生が一体となっており、一体となったところに物語が生まれているからだ。報告では、この公と私の関係を歴史、人生、物語を補助線に考えてみたい。

第4報告 岸政彦

1967年生まれ。社会学者・作家。立命館大学先端総合学術研究科教授。研究テーマは沖縄、生活史、社会調査方法論。主な著作に『同化と他者化──戦後沖縄の本土就職者たち』『街の人生』『断片的なものの社会学』『マンゴーと手榴弾──生活史の理論』『東京の生活史』(編著)『質的社会調査の方法──他者の合理性の理解社会学』(共著)など。小説に『ビニール傘』『図書室』『リリアン』(第38回織田作之助賞受賞)など。

報告内容

2015年から始めた「沖縄戦と戦後の生活史」プロジェクトを紹介する。現在までに沖縄戦体験者60名から、戦争体験と戦後の暮らしを含めた詳細な生活史を聞き取っている。本報告では、この調査から得られた語りをいくつか参照し、戦争と占領という巨大な歴史的事件が「個人」によってどのように経験され、語られるかについて考える。個人の経験と語りを、マクロな歴史と構造に結びつけて理解することがここでの目標である。