外に出ること

かなり昔の教え子で、すばぬけて優秀で、繊細で、傷つきやすく、そして攻撃的なやつがいて、いちど彼女から飲みにいこうと誘われて飲みにいったときに、将来の話になって、だれともちゃんと付き合えない私の夢は、歳をとって、おばあさんになったときに、古い小さな団地でひとりで暮らして、窓際の植木鉢に水をあげながら、ああ、やっと雨があがったな、とつぶやくような、そういう暮らしです、と言っていた。

しばらく会わないあいだに、彼女はひとりの男性と出会い、一目惚れをされ、押し切られて、すぐに付き合うようになり、あっというまに結婚して妊娠して出産した。

みんなでお祝いしようということになって、彼氏と一緒に飲んだのだが、非常に背の高い、「男らしい」、かっこいい、スポーツマンタイプの男で、とにかく情熱的で、そして素朴で明るく、やさしくて、人柄が良い。

誰と付き合うべきとか、付き合うべきでないとか、こんなタイプがいいとか悪いとか、そもそも恋愛や結婚というものをしたほうがいいのかしなくてもいいのか、そういうことは、一般的なレベルでは、誰にも何も言えないが、彼女に関しては、彼女とはまるで真逆な、そういう男と付き合うことで、ひたすら自分自身のことを考える出口のないしんどさから抜け出すことができたんだなあ、まるで合わせ鏡のような自分と自分の迷路から、その男が強引に外に連れ出してくれたんだなあと思った。

そういうことがあるんだな。

それからまただいぶ経ってから、電車のホームでばったり会った。小さな子どもを連れていた。またみんなで集まって飲もうと約束した。


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