ヤクザのなりかた

FBで書きなぐったことシリーズ。よっぽど仕事で鬱憤がたまっているのか(笑)、「ちょっとヤクザになるわ!」といって、映画マニアの夫民哲さん(@miiin3 さん)から教えてもらったインファナル・アフェア3部作と、​北野武のアウトレージを借りてきて、先にアウトレージ見たところで感想は「ヤクザにならなくてよかった」でした。なんかもう究極のブラック企業の話を延々と聞かされてる感じだったな(笑)あそこまで暴力とか「イヤさ」をリアルに描いていくと、逆に映画として​は「じゃあ何が目的でこの人らこんなことしてるんだ?」って思っちゃうなあ……。とにかくスカッとすることが一度もないままずっと淡々とひどい暴力の話が続きました。でもめっちゃ面白かったけど。どっちやねん。しかしまあ途中でふっと「なんでこいつらこんなに殺し合いしてるんだ?」とスに返る瞬間も……。キャッチコピー通り「全員悪人」だと本当に感情移入するスキがない。ただもう「ああまた殺されたー」の連続。でも面白かったけど。どっちやねん。板谷由夏がたいへんにきれいでした。

ところでこれは某所で聞いた実話なんですが、昔ヤクザやった人が若いとき、モメた相手側の事務所にひとりで乗り込んで詫びを入れるときに、激昂してその場にあったでかいクリスタルガラスの灰皿を叩き割って、その破片で自分の指をツメたっていうエピソードを聞いて、さぞかしその現場では静まり返った空間に「ごりごりごりごり」っていう音だけが響いていたことと思われます。

その他にも若いときに親分のところに書生っていうか弟子?として住み込んだときの話もいろいろ面白かったけど、まあ具体的には書きませんが、めちゃめちゃホモソーシャルやな。そしてもんのすごい組織の規律がキツい。

一方で、その場で灰皿叩き割って自分の指を切り落とすぐらい腹が据わってないといけないし、他方で、親分からトイレでケツを拭けと言われたら拭かないといけない(これも実話)。

むちゃくちゃに極端な行動が取れて、しかもなおかつ、組織の一員として理不尽なほど厳しい規律に耐えなければならない。こういう稼業がどういうタイプのひとにつとまるかっていうと、それはたぶん、「自分というものがぜんぜん無いひと」だと思います。「ひと」っていうか、「男」な。

つまらない理由でも自分の指を切り落とすことができる、生理的にもっとも嫌悪感を感じるようなことでも自分の意思で平気でできるっていうのは、要するに、自分の感覚を自分から切り離すことができるっていうことで、それは普通のひとにはぜんぜんできないことだけど、たまにそういうことができるひとがいて、そういうひとがこの業界で生き残っていけるんだと、上の話を聞いたとき思った。たとえば、いまお前そこの汚物を食え、と言われて、口のなかに入れることができる。そのときの匂いとか味とか舌触りなんかと、自分の意識を切り離すことができる。

組織に入る最初のきっかけはくだらない強がりやいきがり、暴力衝動や欲望かもしれないけど、この業界にはこの業界なりの規範というものがあって、それは「男の美学」とかそういうこととはまったく無関係かもしれない。そこまで自分を捨てることができるっていうのは、欲望とか美学とかプライドとかそういう話じゃないよな。

美化できないし、よくないことだけど、それはそれで舐めてると痛い目にあうっていうか。

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